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東京都北区の赤羽牧洋記念クリニック 整形外科,リハビリテーション科,外科,内科,漢方内科

副院長インタビュー

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東儀秀樹さんとご関係があるのですか?

私の姓の「東儀」は奈良時代から雅楽に携わる家系で、有名な東儀秀樹さんとは親戚ではありませんが、伯父の東儀祐二(ゆうじ)は戦前の宮内省楽部を卒業し、楽師として宮中で雅楽(篳篥=ひちりき)を演奏しておりました。戦後はヴァイオリン奏者に転身しヴァイオリン教育の第一人者となり、教え子には五嶋みどりさんや葉加瀬太郎さんなど多数の有名な東儀一門のお弟子さんがいます。また、東儀の源流は秦氏で、秦河勝(はたのかわかつ)は、京都太秦(うずまさ)を中心に支配し、聖徳太子から授かった仏像をまつるために603年広隆寺を建立しました。秦氏の先祖は『日本書紀』に記載される渡来人の夕月君(ゆづきのきみ)で、百済貴族または秦(しん)の始皇帝の後裔(こうえい)とされています。始皇帝は万里の長城や兵馬俑(へいばよう)を多くの奴隷を使って作らせたのですから、あまりいい先祖とは言えませんが・・・。ただ正確には、私の祖父は赤松家から東儀の養子になったので、戦国時代、黒田官兵衛に滅ぼされた播磨(はりま)の豪族の血筋なのかもしれません。

私の父(三男)はサラリーマンでしたが、祐二さん(次男)の影響もあってか、音楽的素養もありました。「見て覚えた」と言ってクラシックのピアノ曲を器用に弾いているのを、幼心に感心して聴いてきました。私が医者を目指そうと思い立つ前は、音楽関係の仕事に就きたいと考えて高校を中退して「自分探しの旅」に出たこともあります。今、クリニック主催の年2回の健康コンサートで歌を歌ったり、沖縄舞踊エイサーを踊ったりしているのも、こういった生い立ちと関係があるのかもしれません。

医学博士号は骨粗鬆症の研究ですね。

骨というとカルシウムをすぐイメージすると思いますが、骨の組成はカルシウムやリン酸、マグネシウムといった無機成分が70%、コラーゲンなど有機成分が20%、水分が10%です。全体の中でカルシウムの占める割合は、実は20%程度しかありません。もしカルシウムだけで骨ができていたら、チョークのようにポキッと折れやすいと思います。骨粗鬆症の診断には骨密度を調べますが、チョークは骨密度が最高にいいことになります。単純に骨密度=骨の強さではないのです。では“骨が強い”とはどういうことなのでしょう。地震大国日本の建築は、古来から木造建築です。世界遺産で有名な法隆寺は、世界最古の木造建築群で607年創建です。自然の恵みである木材には有機成分が大量に含まれています。古代人の建築技術もさることながら、木材の材質による建物全体のしなやかさが、地震にも耐えられる強度を与えていることは間違いないでしょう。現代は、鉄筋コンクリート造り(無機質の塊)なので、耐震装置などでしなやかさを人工的に作り出して倒壊を防いでいます。骨の強度にも骨のしなやかさが大きく関係しています。骨の強さ=骨密度70%+骨質30%と言われるのは、このことを意味します。骨質に関係しているのが、有機質であるコラーゲンと骨代謝です。コラーゲンは皮膚や腱や軟骨に多く含まれるたんぱく質の一種で、美容に欠かせないといったイメージでしょうか?コラーゲンは、弾力性のある部分に多く含まれますが、骨にも20%程度含まれ、コラーゲンの質は骨質つまり骨強度に大きく関係します。

 糖質過剰に注意が必要

 コラーゲンの質を低下させる原因の一つに糖質過剰があります。血中のブドウ糖が過剰になるとたんぱく質に糖が結びつきAGE(終末糖化産物)を生じます。AGEは強い毒性をもち、老化を進める原因物質として近年注目されています。骨のコラーゲンに蓄積すると骨強度が低下し、血管に蓄積すると心筋梗塞や脳梗塞、目に蓄積すると白内障の原因となります。清涼飲料水や菓子類に使われる人工甘味料は、ブドウ糖の10倍の速さでAGEを作るので特に注意が必要です。ちなみに、糖尿病の診断基準に用いられるヘモグロビンA1cは、赤血球のたんぱく質であるヘモグロビンが糖化したもので、AGEに変化する一歩手前の中間糖化物質です。糖尿病では骨密度が比較的良くても骨折しやすい骨なのです。

 骨は生きている

 もう一つ骨質に関係する問題は、骨代謝です。アレルギーやリウマチなどの病気でステロイドという薬を飲んでいる患者さんは、副作用として骨粗鬆症になることが知られています。私は大学院で“ステロイド性骨粗鬆症”と加齢による“退行性骨粗鬆症”の脊椎の骨の状態を比較する研究をしていました。レントゲンでみると、退行性骨粗鬆症では、縦の骨梁が目立つために、“コーデュロイ”という縦じまのようなスジ(日本で言うところのコール天と同じ)が椎体にできて、やがて過度の荷重が集中しやすい胸腰椎移行部(第12胸椎と第1腰椎)に楔状型(楔のように変形を起こす)の圧迫骨折を生じます。一方、ステロイド性骨粗鬆症では、椎体の内部が均一に薄くなって“ゴーストライク(幽霊のような)”という中が空洞のような状態の骨になり、凹レンズのような魚椎変形が全脊椎に広がっていくことが分かりました。

 骨は生きているので新陳代謝を24時間休まず行っています。破骨細胞が傷ついた古い骨を破壊・吸収して、骨芽細胞がそれを修復・形成します。骨形成と骨吸収のバランスが取れた状態が“動的平衡状態”である健康な骨で、骨吸収が優位な状態が骨粗鬆症です。通常の退行性骨粗鬆症では、骨細胞がセンサーとして荷重情報を発信し、その情報を受けて骨芽細胞が働くため、縦の骨梁が最後まで吸収されずに残っているのに対して、ステロイドは骨芽細胞の働きを抑えてしまうため、骨細胞からの荷重情報を活用することができずに、縦横の骨梁が均一に吸収されて骨が減っていくのです。骨に荷重をかけること、つまり運動することは大変重要です。無重力の宇宙に滞在する宇宙飛行士は、急激な骨量減少を防ぐために、骨吸収抑制剤をいう骨粗鬆症治療薬をあらかじめ内服して、骨が溶けないようにして宇宙に出かけるのです。

 カルシウムとリンのバランスを崩す牛乳

 閉経後に女性の骨量が減るのは、破骨細胞の活性化を抑える女性ホルモンが低下するからです。高齢になって骨が減っていくのはある意味仕方ないのですが、20代のピーク骨量を最大限に高めておくことは大変重要です。そのために栄養と運動、この二つが重要であることは論を待ちません。牛乳や乳製品でカルシウムやたんぱく質をとることは、栄養学的な観点だけを考えると、成長期には必要であるとの研究結果がほとんどです。つまり、アレルギーや乳糖不耐症(日本人の8割ともいわれる)、大量生産のためにホルモン剤や抗生物質で薬漬けにされている乳牛から、機械的に搾乳される牛乳を飲むことで起こる病気のリスクを完全に無視すればということです。私自身は、牛乳をのむと鼻炎と下痢という症状を長く経験して、大人になってから牛乳をやめて味噌汁を飲むことで胃腸虚弱とアレルギーをかなり克服することができました。

 高齢者が乳製品からカルシウムを大量にとることは、成長期とはまた別の問題があります。当たり前ですが牛乳は牛の赤ちゃんが飲むものです。牛乳にはIGF-1(インスリン様成長因子)とエストロゲン(女性ホルモン)が多く含まれます。これらは、乳製品を好む若い女性の乳がんが急増している原因の一つですが、当然、高齢者においてもリスクを高めてしまいます。骨粗鬆症において乳製品はどうなんでしょうか?一部の人にはいいかもしれません。というのも腎機能が正常であるかどうかが鍵です。牛乳はヒトの母乳に比べてもリン(P)の濃度が高いのが特徴です。血液中のPで不必要な分は腎で排泄されますが、高齢者は腎機能がほとんどの場合低下しています。健診などで見かけるクレアチニン(Cr)とあるのが、腎機能の目安になります。クレアチニンは筋肉で作られる老廃物なので、低いほどいいのですが、体重・年齢・性別で補正した、クレアチニンクリアランス(CCr)が正確な腎機能を反映します。Ccrの正常を100とすると高齢者は60を下回る場合が多くなります。小柄な高齢女性ならCrが0.7を超えると腎機能低下があると考えていいと思います。

 ビタミンDの重要な働き

 腎機能低下の原因は、加齢に伴うもの以外に、高齢者がよく使われる痛み止めであるNSAID(非ステロイド性消炎鎮痛剤)などがあります。NSAIDは腎血流量を低下させる副作用があります。Pは食物からの吸収率がカルシウム(Ca)よりもいいため、腎臓からのP排泄の低下によってPが上昇します。すると副甲状腺ホルモン分泌が刺激され、Pを下げようと働くと同時に、Pとのバランスをとるために骨を溶かしてCaを供給しようとします。血液中に増えたCa×Pはカルシウムリン酸塩を形成して、血管壁の石灰化をおこして動脈硬化の原因になったり、関節にたまった石灰沈着が炎症を起こすと偽痛風(ぎつうふう)になります。高齢者の骨粗鬆症の方がおこす突発性の関節炎のほとんどが偽痛風発作です。スナック菓子、炭酸飲料、インスタント食品などあらゆる加工食品に保存料・発色剤・光沢剤・炭酸保持剤としてリン酸塩が添加されていますので、とくに注意が必要です。

 「だったら何からCaをとったらいいんだ!」とおしかりを受けそうです。Caを効率よく体内に吸収するには、ビタミンDが必要です。ビタミンDは魚・舞茸・卵などの食品以外に、直射日光によって皮膚で合成されます。さらにビタミンDは、筋肉に働いて筋力を強化して転倒を防いだり、大腸がんを減らすという調査結果もあります。冬に高齢者の骨折が多い原因の一つに、日照時間が短いことがあるのではないかと思います。ビタミンDが豊富であれば、乳製品でなくても、小魚・干しエビ・小松菜・チンゲン菜・大豆製品などからでもカルシウムの補給は間に合うのではないかと思うのです。また、骨のしなやかさを保つには、骨型コラーゲンの活性化に重要なビタミンKが必要で、納豆を筆頭に、ホウレンソウ・小松菜・ニラ・ブロッコリー・サニーレタス・キャベツなどが豊富です。実は、納豆消費量のすくない関西圏で、大腿骨頸部骨折が多いという疫学データもありますし、ビタミンK2製剤は骨粗鬆症治療薬として用いられています。

 骨は建物と違って、単に体を支える構造物ではなく、体全体の中で“生きている臓器”なのですから、「カルシウムが必要だから牛乳とヨーグルト」と単純に飛びつくのではなく、体全体の健康を考えながら、心と体が喜ぶような生き生きとした生活と栄養のバランスを考えていきたいものです。

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